むし歯・歯周病の予防
むし歯、歯周病を予防するには『口の中を清潔に保つこと』が重要であり、その為には正しく適切なお口のケアが必要となります。
お口のケアの基本
自分で行うお口のケアの基本は「歯磨き」ですが、歯ブラシだけでは、歯と歯の間の歯垢や食物残渣(食べカス)などの全てを取り除くことは困難です。
必要に応じて様々なケアグッズを併用し、毎日のケアでは取りきれない歯石などの汚れは、歯科医院で定期的に取り除いてもらいましょう。
フッ素の利用
また、フッ化物による歯質の強化もむし歯の予防には効果的です。
フッ素入りの歯磨き剤の使用や、歯科医院でのフッ素塗布がお勧めです。
歯科医院でのメンテナンス等について、詳しくは歯科医師にご相談ください。
『プラークコントロール』という言葉をご存知ですか?
「プラーク」とは歯垢のことで、むし歯や歯周病を引き起こす粘着性の細菌の塊です。
プラークはバイオフィルム(生物膜)の一種であり、歯の表面にしっかりと密着している為、歯ブラシなどで物理的にこすり落とさなければ取り除くことは出来ません。
そして、プラークは取り除かれないでいると、唾液中のミネラル分を吸収して次第に歯石となり、通常のブラッシングでは落とすことができなくなってしまいます。
この「プラーク」が減少するようにコントロールすることを『プラークコントロール』と言います。
プラークを取り除くには
プラークを取り除くには、磨き残しがないよう正しくしっかり磨くことが大切です。
自分に合ったブラッシング方法で適切に磨き、歯ブラシでは届かない場所は様々なケア用品を併用するようにしましょう。
ブラッシング方法や各種ケア用品の使い方については、歯科医院で直接指導を受けることをお勧めします。
また、毎日のケアでは取りきれない歯石などの汚れは、歯科医院でのクリーニングで定期的に取り除いてもらいましょう。
シュガーコントロール
そして、プラークコントロールでは、歯磨きなどの「物理的なプラークの除去」以外にも、「プラークの形成を妨げる」日々の食習慣(シュガーコントロール)も重要なポイントとなります。
栄養バランスの良い食事を、決まった時間にしっかりと噛んで食べるようにし、砂糖を含む飲食物を、ダラダラと食べ続けたりしないようにしましょう。
食習慣と歯の関わり
飲食の直後は、お口の中の細菌が糖質から酸を作り出し、歯垢のpHが酸性へと傾きます。
お口の中が酸性になると、歯のエナメル質が「脱灰」されて溶け始めるのですが、時間と共に唾液によって中和され、脱灰はおさまります。
すると、今度は溶けた成分が歯に戻る「再石灰化」が始まります。
「脱灰」と「再石灰化」のバランス
口腔内ではこの「脱灰」と「再石灰化」が食事の度に繰り返され、バランスを取っています。
ダラダラと飲食をすると、口腔内が酸性に傾いた状態が続き、脱灰が進んで再石灰化量が減少し、むし歯になりやすくなります。
この為、食事や間食は間隔をあけて、一定の時間に食べるようにしましょう。
再石灰化の促進
また、食後は再石灰化が促されるよう、CPP-ACP(リカルデント)やPOs-Ca(リン酸オリゴ糖カルシウム)が配合されたシュガーレスガムなどを噛むこともお勧めです。(歯科医院で販売されています。)
毎日のお口のケアと合わせ、食習慣にも気をつけましょう。
歯科医院でのむし歯・歯周病予防
歯科医院では、むし歯、歯周病を予防する為の、プロによる特別なメンテナンスを受けることができます。
日頃のケアが最も重要ではありますが、むし歯・歯周病予防としてはまだまだ不十分ですので、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることをお勧めします。
歯科医院で受けられるメンテナンスには以下のものがあります。
スケーリング(歯石の除去)
プロによる歯石の除去を「スケーリング」と言います。
スケーラーという専用の器具を使用し、日頃のケアでは取りきれない歯石や歯の表面の沈着物を取り除きます。
スケーラーには手用スケーラー、超音波スケーラー、エアースケーラーがあり、歯石の付着状況などに応じて使い分けられています。
詳しくは歯科衛生士にご確認ください。
ルートプレーニング
スケーリングでは取りきれない、歯周ポケット(歯肉縁下)の汚染部の除去を「ルートプレーニング」と言います。
歯周ポケットの歯根表面のセメント質は、ポケット内の細菌により汚染され、柔らかくなっている為、歯垢や歯石がつきやすくなっています。
その汚染されたセメント質を専用の器具で取り除き、歯根表面を固く滑らかに仕上げることで、歯垢や歯石をつきにくくします。
詳しくは歯科衛生士にご確認ください。
PMTC
プロによる歯のクリーニングのことを「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング・Professional Mechanical Tooth Cleaning)」と言います。
スケーリング(歯石除去)とは異なり、専用の器械や薬剤を使い、通常のブラッシングでは取りきれない歯に付いた汚れ(バイオフィルムやステイン)、歯石などを取り除き、むし歯のリスクを下げる施術です。
PMTCは痛みもなく、処置後には歯垢がつきにくくなります。
詳しくは歯科衛生士にご確認ください。
フッ素塗布
歯磨き剤に含まれるフッ素と、「フッ素塗布」で使用されるフッ素は濃度が異なり、それぞれ期待できる効果も異なります。
歯磨き剤に含まれる低濃度のフッ素は「歯の再石灰化の促進」「酸の産生を抑制する」効果があります。
「フッ素塗布」に使用されるフッ素は、濃度が高い為「歯質の強化」の効果が期待でき、特に生えたばかりで未成熟な乳歯や永久歯には効果的です。
フッ素塗布の回数とむし歯の予防効果
歯科医院での「フッ素塗布」が必要な回数は、お口の状態によって異なりますが、年に数回の塗布を行う事で20~40%程度のむし歯の予防効果があると言われています。
また、歯磨き剤でのケアと合わせて行うことで、むし歯予防の効果はより高まります。
フッ素塗布の方法などは歯科医院によって異なりますので、詳しくは歯科医師にご確認ください。(フッ素が含まれる歯磨き剤は、歯科医院でも販売されています。)
フッ素塗布の効果
歯の表面は、エナメル質で覆われています。
エナメル質は人体で最も硬い組織ですが、酸には弱く、常に酸にさらされていると、徐々に溶け(脱灰)てしまいます。
フッ素塗布を行うと、フッ素はエナメル質の「ハイドロキシアパタイト」に作用し、耐酸性を持つ「フルオロアパタイト」という酸に強い組織に変化させてくれます。
特に生えたばかりの乳歯、永久歯は未成熟で柔らかく、酸によるダメージを受けやすいのですが、フッ素塗布を行うことで歯質を強化し、むし歯の予防が期待できます。
また、再石灰化を促進する効果もある為、ごく初期のむし歯の場合には自然治癒を助ける効果も期待できます。
フッ素の安全性
フッ素は私達が日頃口にするあらゆる飲食物に微量に含まれており、私達は普段の食事などから少しずつ体に取り込んでいます。
WHO(世界保健機構)やFAO(食糧農業機関)の指針では、フッ素は必須栄養素のひとつでもあり、大量に摂取しなければ体に悪影響を及ぼすことはないとされています。
フッ素入り歯磨き剤の使い方
- 歯ブラシは濡らさず、1cm(1g)以上のフッ素入り歯磨き剤を付けます。(5歳未満では5mm以下)
(歯ブラシを濡らさないのは、泡立ち過ぎるのを防ぐ為です。) - まず、歯磨き剤を口全体に行き渡らせてから磨きます。
途中で歯磨き剤を吐き出さないようにしましょう。 - 少量のお水で1回だけ口をゆすぎます。
フッ素が出来るだけ長く口に留まるようにしましょう。
歯磨き後は、1~2時間、飲食を控えるとより効果的です。
歯磨き指導
歯科医院ではプロによる歯磨き指導(ブラッシング指導)を受けることができます。
患者さんそれぞれに合った、ブラッシング方法や、必要なお口のケア用品について、指導してもらうことができます。
指導方法等は歯科医院によって異なりますので、詳しくは歯科衛生士にご確認ください。
シーラント
むし歯になりやすい奥歯の溝に、プラスチックで蓋をする処置を「シーラント」と言います。
奥歯の噛む面には溝がありますが、食物残渣(食べカス)が溜まりやすく、歯磨きなどのケアで綺麗にしにくい場所でもある為、むし歯ができやすい場所のひとつだと言えます。
特に、生えたばかりの乳歯、永久歯では、歯が噛み合わせなどによってすり減っていないこともあり、溝が深く複雑で、ここからむし歯になってしまうことが少なくありません。
シーラントでは、歯を削ることなく、これらの溝を埋めることで、むし歯予防の効果が期待できます。
シーラントとメンテナンス
ただし、シーラントは自然にとれてしまうことも少なくありません。
その場合は、歯科医院で再び処置を受けることが可能です。
毎日の口腔ケアと歯科医院でのメンテナンスで、しっかりむし歯の予防をしましょう。